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モバイル社会研究所

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通信業界の直接の利害を離れ、自由独立の立場から、モバイルICTがもたらす光と影の両面を解明し、その成果を社会に還元することを目的とする、NTTドコモの社会科学系の研究所です。

2017~2018年のスマホ・ケータイ社会トレンド総括

モバイル社会白書Web版

前回の『データで読み解くスマホ・ケータイ利用トレンド2016-2017-ケータイ社会白書-』(以下、ケータイ社会白書)から、約2年が経過した。この間も、社会やICT環境にはさまざまな変化や進化が起きており、例えば60代シニアのスマートフォン所有率が過半数に達したり[資料5-4]、例えば人工知能が世界最強の棋士に打ち勝つなど(2016年3月のAlphaGOとイ・セドル棋士の対戦)、以前には、まだまだ先の出来事、あるいは想像上の出来事でしかなかったような事が、実現され始めてきている。本項では、その様な、社会やサービス、技術の進化をめぐる2017年から2018年にかけての主な動きについて概観する。

ハードウェアのトレンド(5G、AI、IoT/IoE関連技術の進化)

スマートフォンにおいては映像・音声に関する性能向上が進んでいる。デジタル一眼レフに匹敵するカメラ性能や高精細な4Kでの動画再生/動画撮影に対応した機種が市場に登場している。また、音質面でもFMラジオ相当の高音質通話やDolby Vision/Atoms対応等の進化がみられる。

高品質な映像再生・音声再生や高度な映像認識・音声認識は、5GやAIとの整合性が高く、スマートフォンに限らずハードウェア・ソフトウェア両面での高性能化が今後も進むと考えられる。

ウェアラブル端末はメガネ型、腕時計型、リストバンド型、衣類型、アクセサリー型などのさまざまな種類のデバイスが市販されており、Apple Watchに代表される高機能なスマートウォッチが堅調に伸びている。

近年、非常に活気を帯びている分野は、あらゆるモノをインターネットにつなぐという、いわゆるIoT(Internet of Things)/IoE(Internet of Everything)関連技術である。現在、さまざまな業界がIoT/IoEとビックデータ・5G・AI技術と複合した新たなプラットフォームの構築を進めている。

AmazonやGoogle等は音声をインタフェースとしてさまざまなサービスや機器の操作を行うスマートスピーカー(AIスピーカー)を市場に投入しており、価格の手軽さと相まって今後急成長することも予想される。ソニーはイヌ型ロボット「AIBO」で培った技術をもとに、卓上型コミュニケーションロボット「Xperia Hello!」に続き、通信機能を有するイヌ型エンタテインメントロボット「aibo」を発売。また、トヨタ自動車はCES2018にて新たなモビリティプラットフォーム構築のための次世代自動車「e-Palette Concept」を発表した[1]。e-Paletteは無線通信にてデータセンター(TOYOTA Big Data Center)につながり、移動や物流、物販などの複数のサービス事業者による効率的な相互利用を想定している。IoT/IoE技術を活用した各社の新サービスへの取り組みは、エコシステム[2]の構築に向けた各社の動向とも絡み、今後さらに活発になることが予想される。

スマホ・ケータイメーカーおよび通信事業者をめぐるトレンド(iPhoneシェア拡大、楽天の通信事業への参入)

従来、移動通信はPDC(Personal Digital Cellular)やGSM(global system for mobile communications)、cdmaOne等の複数の方式が各国にてそれぞれ進化してきた。しかし、通信方式や通信周波数等の通信規格の統一が世界的に進んだ結果、スマホ・ケータイメーカーにおいては、グローバルかつ大規模に端末事業を展開するサムスン電子やAppleなどの影響力が大きくなった[3]。特に日本ではiPhoneユーザーのシェアが非常に高く[資料1-1]、若い世代を中心に広く浸透しているため今後もこの状況が続くと考えられる。

通信業界全体に目を向けると、楽天がNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに続き第4の携帯電話キャリアとして参入することが話題となった。楽天は総務省から携帯電話向け周波数の割り当ての認可(2018年4月6日)を受け、2019年10月にサービスを開始予定である。新たなキャリアが加わることで競争が激しくなることが予想される。

IoT/IoEの隆盛に伴いさまざまな業種が(スマホ・ケータイやノートPCといった従来機器の枠にとらわれることなく)独自のプラットフォームの構築を進める一方で、従来からの通信事業者も異業種と手を組みサービスの幅を広げている[4],[5],[6]。巻頭言でも触れたように、その業種は、教育・物流・金融決済にとどまらず、医療・交通・農業・畜産・建設業などのさまざまな分野に及んでいる。

クラウドサービスのトレンド(サービス拡大とデータ管理の厳格化)

クラウドサービス[7]としてはiCloud、Googleドライブ、Dropbox、OneDrive、Amazon Driveなどのファイル保存・共有サービスが一般に馴染み深いと思われる[資料3-9]。しかしクラウドサービスは単なるファイル保存・共有サービスには留まらず、Amazonの「AWS(Amazon Web Services)」、Googleの「GCP(Google Cloud Platform)」のようにクラウドを利用した各種サービス(あるいはサービス開発基盤)を提供する形態が広く提供されている。近年では、インターネットで提供されるさまざまなサービスの多くが、利用者が意識するかどうかに関わらず、クラウドサービス上で稼働している。

2016年9月から総理自らが議長となり議論が始まった「働き方改革実現会議」が追い風になり、クラウドサービスを提供する企業は近年活気づいている。働き方改革は一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置付けられており、テレワークの推進や業務効率化のため、クラウドサービスの利用/導入が大きく進むと考えられている。

また、クラウドサービスによる業務効率化にとどまらずAI・ビッグデータと組み合わせてマーケティングや営業に活用する企業も増えている。総務省と経済産業省が実施している情報通信業基本調査[8]によると2016年度のクラウドコンピューティングサービスの1企業当たり売上高は前年度比53.6%増と大幅な伸びを示している。一方、クラウドサービスの普及に伴い個人情報を含むデータが国を跨いで保管・利用されるケースが増加することが予想される。これに伴い中国ではサイバーセキュリティ法/インターネット安全法(2017年6月施行)、欧州ではEU一般データ保護規則(GDPR:General Data Protoction Regulation)(2018年5月施行)において、越境データに関する規定を設けている。日本では改正個人情報保護法(2017年5月施行)において、「外国にある第三者への提供の制限」の条項などが新設されている[9]。

ソーシャルメディアのトレンド(盤石なLINEと急拡大するInstagram vs 新興の「+メッセージ」)

ここでは、日本で広く普及している、LINEやFacebook、Twitterに代表されるようなSNS(Social Networking Service)について述べたい。

総務省の平成29年版情報通信白書によれば、LINE、Facebook、Twitter、mixi、Mobage、GREEの被調査6サービスのいずれかの利用率は年々上昇している。これらを利用している割合は70%を超え、SNSの利用が幅広く行われるようになってきていることを示している。特にLINEは、6サービスの中で最後発でのサービス開始[10]ながらも、現在では最も利用率が高いサービスとなっており、社会の基盤サービスとしての地位を確立しつつあると言っても過言ではない。また、近年Instagramの利用が急拡大しており、この勢いがどこまで続くかは、要注目である[資料2-14]。

社会の基盤サービスとなりつつあるSNSであるが、文部科学省の調査によれば、SNSなどの携帯電話やパソコンを使ったいじめの認知件数は1万件を超えている事実がある(出典:文部科学省「平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」について(確定値)」平成30年2月23日)。大変便利で、楽しいSNSであるが、使われようによっては、そのような陰を見せる一面があることを忘れてはならない。何らかのトラブルに巻き込まれないようにするためにも、家族や親子間で、SNSの使い方に関する何らかのルール決めをしておくことも一考である。

このような情勢ではあるが、2018年4月10日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯電話大手3社から、3社共通の新しいメッセージサービス「+メッセージ」の提供が発表された。ここまで大きくLINEが世の中に受け入れられている市場において、「+メッセージ」によりどのように市場が変化するか見守っていきたい。

移動通信インフラのトレンド(着々と進む5Gの開発)

移動通信をめぐるインフラの最近の話題は、「5G」と呼ばれる第5世代移動通信システムであろう。図1を見てほしい。今回の5Gは、第1世代移動通信システムの始まりから、約10年ごとに繰り返されてきた移動通信システムの5世代目にあたる。この間、通信システムの進化とともに、使われるデバイスやサービスも進化してきており、いまや移動通信は、人々の日常生活になくてはならないものにまでなっている。

簡単に、移動通信システムの進化の歴史を振り返ってみたい。

携帯電話黎明期の第1世代では、それまで使われていた自動車電話や肩に下げるタイプのショルダーホンから、大幅に小型軽量化が進んだハンディタイプの端末が登場した。本当の意味での携帯電話の登場である。この頃はまだ、音声通話中心のサービス提供であった。

第2世代においては、アナログ方式であった通信方式が、PDC(Personal Digital Cellular)などのデジタル方式に進化した。IP接続サービスのiモードやEZWebなどが登場し、“話すもの”であった携帯電話に“使うもの”という概念が生まれた。ケータイの液晶画面のカラー化や、カメラ付携帯電話が登場したのもこの頃である。

次に登場した第3世代は、2001年、NTTドコモがFOMAというサービス名称で、世界最初のサービスを開始した。第3世代での特徴の1つは“高速通信”とされていた。実際、最初に出たFOMA端末の1つFOMA P2101Vにはテレビ電話機能が搭載されており、64kbpsの通信速度ながらも、当時としては画期的な動画による通話を可能としている。なお、前世代のPDCでの通信速度は9.6kbpsであったので、64kbpsの通信速度は、実際に“高速”であった。

その次に登場したのは、現在サービス提供中の第4世代の「4G」である。この「4G」時代においては、スマートフォンが爆発的に普及した。折り畳み型が主流であった時代に登場した、いわば“板”形状のスマートフォンは、時代の変化を感じさせるものであった。このスマートフォンの普及に伴い、OTT(over the top)と呼ばれるLINEやFacebookなどの企業のサービスも爆発的な勢いで普及してきた。それは、従来自社契約者向けに独自サービスを提供していた携帯電話事業者に少なからぬ影響を与えており、携帯電話事業者自体がOTTのように自社契約者以外にもサービスを提供するなどの動きを見せるようにもなってきている。なお、世間ではLTE(Long Term Evolution)が4Gの代名詞として解されているが、厳密には、LTEは3Gから4Gへの橋渡しを期待された過渡的な技術であり、本来は明確に異なるものである。しかし、通信事業者自身がLTEを4Gとも呼んでいることもあり、事実上、LTE=4Gとなってしまっている。

では、次の第5世代の通信方式の5Gでは、どのようなサービスや使われ方が期待されるのであろうか?

図1 移動通信システムの進化および各世代における代表的な技術
図1 移動通信システムの進化および各世代における代表的な技術
「NTTDOCOMO テクニカル・ジャーナル」Vol.23 No.4(2016年1月),P.19

図2をご覧いただきたい。5Gでは、「現行LTEの100倍」の伝送速度、「現行LTEの100倍」の同時接続端末数、「現行LTEの10分の1」の低遅延の実現が期待されている。特に、同時接続数の増大や低遅延の実現は、一般消費者向けのサービスのみならず、医療・産業分野のサービスからの期待も非常に大きく、実現されれば社会的なインパクトは大変大きい。

そのような、社会の変革への期待も大きい5Gであるが、現在、通信規格の仕様の検討・作成を行う標準化プロジェクトである3GPP(Third Generation Partnership Project)において、2018年9月を目標に、2020年サービス開始時の標準仕様策定に向け、現在精力的に作業が行われている。

また、昨年度(2017年度)より、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどの携帯電話大手3社を中心とした参加者による総務省の主催の5G総合実証実験が開始された。同実証実験では、総合病院と地域診療所間の遠隔医療や建設機械の遠隔操作など、いくつかの実際に使われる事例を想定した実証が行われており、2020年のサービス開始に向けた業界を巻き込んだ取り組みが着々と進んでいる。

図2 5Gで何が変わるか
図2 5Gで何が変わるか

出所:総務省 情報通信審議会 情報通信技術分科会 第1回新世代モバイル通信システム委員会資料
「情報通信審議会 諮問 新世代モバイル通信システムの技術的条件について(平成28年10月25日)」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000446203.pdf)P.6

参考:「NTT DOCOMO テクニカルジャーナル」, 総務省情報通信審議会情報通信技術分科会新世代モバイル通信システム委員会資料、総務省5G総合実証試験資料など

未来技術のトレンド(しばらく続きそうなAIブーム)

2000年代初め頃より始まった、第3次人工知能(AI)ブームであるが、10年以上経過した現在においても、いまだ継続中である。すでにバズワードともなっているAIについて、ここでは触れてみたい。

AIの研究開発の歴史を振り返ってみると、1947年にロンドン数学学会で行われたアラン・チューリングによる講義でその概念が提唱され、1957年のダートマス会議で初めて“Artificial Intelligence (人工知能)”という言葉が使われた[11]。この時代は、探索や演繹推論を中心に研究が行われていたが、限られた世界で限られたルールに支配された問題(トイ・プロブレム)を解くことはできても、実用上の問題はほとんど解くことはできなかった。この時代の研究を、第1次AIブームと呼んでいる。

続く第2次AIブームは、1980年代頃である。AI開発の目的の1つ、専門家の判断をAIで代行できないかというエキスパートシステムの研究開発が盛んに行われたが、専門家の判断の基礎となるべき、人間が全く意識せずに備えている“一般常識”をAIに獲得させることが全くできず、この頃の研究開発は期待外れに終わった。

そして今もなお続いている第3次AIブームである。この第3次AIブームの背景には、コンピュータの計算能力向上とともに、機械学習に技術の進展があったことがよく知られている。機械学習の手法にディープ・ラーニングを用いたAlphaGoが、2016年3月に世界最強の棋士とも呼ばれるイ・セドル九段を4勝1敗で打ち破ったことは、まだまだ記憶に新しい。

このことが衝撃的であったのは、多くの専門家がまだ先であろうと考えていたAIによる囲碁の勝利が、2015年10月11日に情報処理学会が「“コンピュータ将棋の実力は2015年時点でトッププロ棋士に追い付いている”という分析結果からプロジェクトの目的は果たした」として、コンピュータ将棋プロジェクトの終了宣言を行ってから1年も経たないうちに実現してしまったことにある。

囲碁はマスの目の数が多いことと、囲碁特有の打ち方として、他の碁石が置かれていない空白の基盤面に対しても碁石を打つことができるなどのことから、極めて多くの手数を考慮する必要があり、チェスや将棋で行われたようなすべての手の内を推定する列挙型の推論ではコンピュータでは計算しきれないため、専門家の間では、囲碁でAIが人間に勝つには2015年から10年くらい先の出来事と思われていた。しかし、そこにGoogleがディープ・ラーニングを持ち込み、10年かかると思われていたことを、わずか1年で実現してしまった。Googleは多くの専門家の予想をはるかに超える、大きな成果を上げたことになる。

さて、そのような急激なAIの発達に伴い、「人間の仕事がなくなる」ということが言われることがある。しかし果たしてそうであろうか? AIは、“人工知能”と日本語では言われているが、その実態は、「知的な情報処理技術」「高度な情報処理技術」にすぎない。確かに、AIが広く社会に浸透してくれば、多くの情報を一度に処理する作業や、多くの情報から1つの事柄を見出すような作業は、AIに取って代わられるかもしれない。しかし、多くのAIが社会に進出するに伴って、AIをメンテナンスする仕事や、AIを設計する仕事などが新しく発生するだろう。また、人間が子どもの頃から無意識に備えているような“一般常識”をAIは備えることはできないので(未来永劫にできないかと問われると、そうではないかもしれないが、少なくともすぐにはできない)、人間の行っていることを単純にAIに置き換えるということはできないだろう。

AIに関連した技術開発については、“仮想アシスタント”や“会話型ユーザ・インターフェース”、“汎用人工知能”など、まだ数多くのテーマが存在している。AIのブームは、まだしばらくは続きそうな様相である。

参考:人工知能学会ホームページ、行動計量学会「ソーシャル・キャピタル+AI研究会」など

■注

  1. [1]https://newsroom.toyota.co.jp/jp/corporate/(2018年6月1日)
  2. [2]エコシステム:複数の企業が事業活動などの分野で連携して,お互いの技術や資産を、活かし,消費者や社会までも巻き込んで,研究開発から販売,宣伝,消費にいたる一連の流れを形作る共存共栄の仕組み。
  3. [3]https://www.counterpointresearch.com/global-smartphone-share/(2018年6月1日)
  4. [4]https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/about/philosophy_vision/strategy/index.html/(2018年6月1日)
  5. [5]http://www.kddi.com/corporate/ir/management/target/(2018年6月1日)
  6. [6]https://www.softbank.jp/corp/irinfo/about/policy/(2018年6月1日)
  7. [7]http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/basic/service/13.html(2018年6月1日)
  8. [8]http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/joho/index.html(2018年6月1日)
  9. [9]http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/(2018年6月1日)
  10. [10]サービス開始時期:モバ研調べ(出典:各社ホームページなど)
    LINE:2011年6月23日
    Facebook:2004年2月4日(米国)、2008年5月19日(日本)
    Twitter:2006年7月15日(米国)、2008年4月23日(日本)
    mixi:2004年3月3日
    Mobage:2006年2月7日(「モバゲータウン」として)
    GREE:2004年2月21日(創業者田中良和氏の個人サイトとして開始)
  11. 人工知能学会ホームページ
    http://www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/AItopics5.html

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