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モバイル社会研究所

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通信業界の直接の利害を離れ、自由独立の立場から、モバイルICTがもたらす光と影の両面を解明し、その成果を社会に還元することを目的とする、NTTドコモの社会科学系の研究所です。

第5章 シニアの生活実態とICT利用

モバイル社会白書Web版

1節 ICT端末所有概況
—シニアのスマホ・ケータイ・パソコンの普及状況は

◆ポイント◆

  • ICT端末のいずれかを所有しているシニアは9割(資料5-1)。
  • 60代でスマホ所有率が5割を超え、ケータイを超えた(資料5-4)。
  • 直近でスマホへ移行した人の理由は「周囲にスマホ所有者が増えた」「家族に勧められた」が増えた(資料5-6)。

本章では、調査対象を60代、70代とする。

資料5-1 ICT所有状況(SA)

ケータイ、スマートフォン、パソコンともに5割前後を所有。

資料5-1 ICT所有状況(SA)

資料5-2 所有しているICT端末の組み合わせ 男性(SA)

  • 60代のスマートフォンの普及に連動し、「スマホとパソコン」の組み合わせ所有が最も多い。
  • 70代は、「スマホとパソコン」、「ケータイとパソコン」、「ケータイのみ」、「どれも所有していない」がそれぞれ2割ほど。

資料5-2 所有しているICT端末の組み合わせ 男性(SA)

資料5-3 所有しているICT端末の組み合わせ 女性(SA)

  • 60代はスマホの普及に連動し、「スマホとパソコン」の組み合わせ所有が最も多い。
  • 70代はケータイのみ所有が半数弱と多い。

資料5-3 所有しているICT端末の組み合わせ 女性(SA)

資料5-4 スマホ・ケータイ所有 年代別経年推移(SA)

  • 60代は2018年に初めてスマートフォンがケータイを上回り、5割を超えた。
  • 70代もスマートフォンの所有率がこの1年で10ポイント増え、3割を超える。その一方、ケータイの所有率は、ほぼ変わらない。

資料5-4 スマホ・ケータイ所有 年代別経年推移(SA)

資料5-5 スマートフォンを使い始めた理由 最も重視した理由(SA)

  • 最も多い理由は「使いたい機能があった」、次いで「家族の勧め」「ケータイが使えなくなった」と続いた。
  • 「能動的」「受動的」に大別すると、大よそ半数に分かれた。

資料5-5 スマートフォンを使い始めた理由 最も重視した理由(SA)

資料5-6 スマートフォンを使い始めた理由 スマホ所有時期との関係(SA)

  • 5年以上前にスマートフォンを使い始めた人の理由として、「使いたい機能があった」が最も多く、半数を超えていた。
  • 直近でスマートフォンを使い始めた人は、「周囲にスマホ所有者が増えた」「家族の勧め」の比率が増えた。

資料5-6 スマートフォンを使い始めた理由 スマホ所有時期との関係(SA)

資料5-7 スマートフォンを使いこなす手法 最も重視した手法(SA)

  • 「取扱説明書を読む」「購入店に聞く」「手探りだけ」が上位。
  • 「自力中心」「他力中心」に大別すると、大よそ半数に分かれる。

資料5-7 スマートフォンを使いこなす手法 最も重視した手法(SA)

資料5-8 スマートフォンを使いこなす手法 スマホ所有時期との関係(SA)

  • 5年以上前からスマホへ移行した人の習得方法として、「取扱説明書等のツールの利用」が最も多く、4割を超えていた。
  • 直近でスマホに移行した人の習得方法は、「親族・友人に聞いた」「購入店・コールセンターに聞いた」の比率が増えた。

資料5-8 スマートフォンを使いこなす手法 スマホ所有時期との関係(SA)

2節 コミュニケーションとICTサービス利用
—誰と何でつながっているか、またスマホがもたらした人との関わり方への影響は

◆ポイント◆

  • 連絡手段の主流は、60代がスマホ・ケータイ、70代が固定電話(資料5-9)。
  • ICTを利用することで、人の交流が密になるが3割を超え、とりわけスマホを利用しているシニアはさらに高い(資料5-12、資料5-13)。

資料5-9 連絡をとる時の手段(MA)

  • シニア全体として、連絡相手に応じて、連絡手段を使い分けている。

資料5-9 連絡をとる時の手段(MA)

資料5-10 別居家族との連絡手段 60代経年推移(MA)

  • スマホの普及と連動し、LINEで連絡をとるが上昇している。
  • ケータイ通話が2015年比1割以上減少したが、固定電話はこの4年間でほとんど増減していない。

資料5-10 別居家族との連絡手段 60代経年推移(MA)

資料5-11 別居家族との連絡手段 70代経年推移(MA)

  • LINE、メールを手段とすることが増加傾向、ケータイでの通話が減少。
  • 「固定電話を連絡手段とする」は、ほぼ横ばいの7割で推移。

資料5-11 別居家族との連絡手段 70代経年推移(MA)

資料5-12 ICT端末を利用して人とのつながりが変わったと思うか(SA)

  • 家族や友人との交流が密になるが3割を超える。
  • 交際範囲の広がりや新しい友だちができるなど、人間関係の拡大に関する事項も1割強で確認できる。
  • 人間関係への悪影響は、ICT利用者において、5%未満である。

資料5-12 ICT端末を利用して人とのつながりが変わったと思うか(SA)

資料5-13 ICT端末を利用して人とのつながりが変わったと思うか 端末別(SA)

  • スマホやパソコン所有者の4割以上は家族や友人と交流が密になると答え、ケータイ所有者との差異が大きい。

資料5-13 ICT端末を利用して人とのつながりが変わったと思うか 端末別(SA)

資料5-14 ICTサービスの利用状況、利用意向(MA)

  • 現在利用しているサービスは「電子メール」「情報検索」「地図・ナビゲーションサービス」の順に高い。
  • 現在は利用していないが、今後利用してみたいサービスは「健康」「地図」「ホームサービス」などが高い。

資料5-14 ICTサービスの利用状況, 利用意向(MA)

資料5-15 健康アドバイスを受け取れるサービス 利用しない主な理由(SA)

  • 「理由はない」「きっかけがない」を合わせると半数を超える。
  • 当サービス普及にあたっては、「きっかけ」を作る場が重要。

資料5-15 健康アドバイスを受け取れるサービス 利用しない主な理由(SA)

3節 シニアの生活の実態とICT利用
—生活(仕事・趣味・日々の活動・買い物)の違いでICT利用に差は生じているのか

◆ポイント◆

  • 日々の活動は中間派が減り、積極派・消極派が増えた。積極派はスマホ・パソコン所有が高く、消極派は低い(資料5-19)。
  • インターネットショッピングを利用しているシニアは、2割弱。
    スマホ所有者に限れば、3割が利用(資料5-20、資料5-22)。

資料5-16 日々の活動の経年変化(SA)

  • 家族や仲間との交流を行っている人は、約6割。
  • 社会活動(地域活動、奉仕活動)に参加している人は4割弱。
  • カルチャースクールに参加している人は3割弱。
  • どの交流、活動も経年変化は少ない。

資料5-16 日々の活動の経年変化(SA)

資料5-17 日々の活動の回答をもとにしたシニアのグループ分け

  • 日々の活動の回答をもとに、シニアをグループ分けすると、すべての活動に積極的な「積極派」、人との交流と教室活動が盛んな「教室でいきいき」、人との交流が盛んな「仲間家族交流」、社会活動に参加している「地域のみ」、すべての活動に消極的な「消極派」に分けることができる。

資料5-17 日々の活動の回答をもとにしたシニアのグループ分け

資料5-18 日々の活動グループの経年変化

  • 4年間で「仲間家族交流」が大きく減る。「積極派」「教室でいきいき」が増えた一方、「消極派」も増える。

資料5-18 日々の活動グループの経年変化

資料5-19 日々の活動グループの特性

  • 積極派は、70代比率が高く、スマホ・パソコン所有率が高い。
  • 教室でいきいきは、60代比率が高く、女性中心で時間的・経済的ゆとりが高い。
    スマホ・パソコン所有率が高い。
  • 仲間家族交流は、有職率が高い以外は特色が少なく、平均的。
  • 地域のみは、男性中心で、経済的ゆとりが低い。ややパソコン所有が低い。
  • 消極派は、男性比率が高い。スマホ、パソコン所有が低い。

資料5-19 日々の活動グループの特性

資料5-20 利用する店舗と頻度(SA)

  • 約7割のシニアは週に2~3日以上、実店舗で買い物を行う。
  • インターネットショッピングの利用は2割弱。

資料5-20 利用する店舗と頻度(SA)

資料5-21 利用する店舗と頻度性年代別(SA)

  • 60代男性が最もインターネットショッピングを利用しており、4人に1人が利用。
  • テレビショッピングはどの性年代においても約1割の利用。

資料5-21 利用する店舗と頻度 性年代別(SA)

資料5-22 インターネットショッピングを利用していることと関係が深い事項

  • スマートフォンもしくはパソコンを所持していると、利用が高い。
  • 経済的ゆとりがある人ほど利用する傾向が見られる。
  • 10万人未満の市町村在住者は高い傾向が見られる。

資料5-22 インターネットショッピングを利用していることと関係が深い事項

資料5-23 就業の状況とICT端末の所有状況(SA)

  • 正規社員はスマホ、パソコンの所有率が他のシニアと比較し高く、約7割。
  • 自営業者はスマホ、パソコンそれぞれ5割を超える所有率だが、ケータイを含め、未保有者も1割存在。
  • パート、アルバイトは、スマホ・ケータイ・パソコン所有がそれぞれ約5割。

資料5-23 就業の状況とICT端末の所有状況(SA)

コラム① シニアがシニアを教える現場 ~ドコモショップサーキット通り店の事例でみる~

鈴鹿サーキットで有名な、三重県鈴鹿市にドコモショップサーキット通り店がある。この店舗は、種々のイベント(夏祭り、魚のつかみ獲り、お菓子まき等)を開催しており、地域に密着した店舗である。その店舗においても、シニア向けのスマホ教室を8年実施しているが、その講師がシニアと同世代である。実際に店舗を訪ね、そのスタッフにお話を伺った。まず、そもそものなぜ講師になったかであるが、驚いたことにスタッフ自らも、もとはこの店舗が行う、スマホ教室の受講者であった。つまり、もとからICTリテラシーが高い人が、講師になっているというわけではなかった。ご自身が身をもって経験されたことが、現在の講師という立場にも、生かされている。

当然ながら、このお店にも既存スタッフが存在し、年齢構成も20・30代と若い。では、最初から働いていたスタッフと溝を感じることはなかったか聞いてみたが、どうやら円満に業務を遂行できているようである。ここで、なぜうまく行っているか、鍵を探るとドコモショップ運営者側の役割が見えてきた。当然ながら、何か問題が発生することはあり、時にモチベーションが低下することもあったようだが、ショップ運営者が間に入り、丁寧に話を聞き、その都度解決していった。またシニアスタッフの役割も明確であった。シニアがスマートフォンを購入したとき、フロアースタッフが説明し、手続きを行う。お客様の中には、それだけでは消化できない人もいる。そうしたときに、フロアースタッフから、シニアスタッフへと引き継ぐ。そうすると、シニアはじっくり腰を据えて、スマートフォンを学ぶことができるというわけである。

そうした環境であるからこそ、スタッフ間の交流も行われている。例えば、お昼休みでも既存スタッフが、仕事の悩みなど、シニア講師が話を聞いたりすることで、店舗の雰囲気もさらに良くなったそうだ。

なお、このようにシニアが講師を務める店舗は、この店舗の系列店6店舗で行われ、スタッフ同士の交流も盛んであった。LINEを使い、日々情報を交換している。ご自身たちが、デジタルシニアというわけだ。

シニア講師:左)鈴木みゆきさん(64)右)森田庸子さん(62)
シニア講師:左)鈴木みゆきさん(64)右)森田庸子さん(62)ドコモショップ運営:中)大仲陽さん

さらにシニアが講師をしていることで、新たな人とのつながりが生まれていた。シニア講師と生徒の間にも交流が生まれ、バス旅行も計画されている。まさにアクティブシニアである。地域で役割を持つシニアが生まれ、そのシニアが他のシニアを巻き込み、地域全体が元気になっていく、そんな実感を覚えた。私がお2人のお話を伺って感じたのは、このお2人には明確な役割が与えられ、またそのことが働くモチベーションにつながっていること。さらにお2人は、プライベートでも充実されており、アクティブな日々を送られている。今回は、縁あってシニア向けのスマートフォンの教室の講師をされているが、おそらく違った場でも活躍されていたのではないかと思う。先述した通り、決してICTリテラシーがもともと高い方ではなく、スマホ教室との出会い、そしていつもモチベーションを上げてくれる運営者との出会いが今の状況を生み出している。シニア世代のICT普及には、こういったシニアが不可欠で、あらゆる場で活躍できる状況が期待される。

コラム② シニア講師のモチベーション向上 ~一般社団法人まなび考房の取組みをみる~

コラム①で紹介したシニアの教える人のモチベーション向上・教えるきっかけになりそうな取り組みも始まっている。一般社団法人まなび考房(名古屋市)では、シニア向けのスマホ検定(スマートシニア地域モバイルサポーター検定)を2016年から開始している。概要は、スマホの講座を受講した後、試験を受ける。難易度により、1級から3級がある(資料C2-1)。

過去の先行研究からも、シニアがアクティブに過ごすためには何らかの「役割」を持つことが、必要とされている。また、われわれの調査では、現在スマホを所有しているシニアの約7割は、さらにスマホを使いこなしたいと答えている。このような学びたい気持ちに対しこうした制度があることによって、成果が目に見える形になり、さらなるモチベーション向上が期待される。

資料C2-1 シニア向けスマホ検定概要
資料C2-1 シニア向けスマホ検定概要

先日、実際にこの制度を運営している、高所真理子代表理事にお会いし、お話を伺ってきた。高所さんは、シニアは役割を持つことがアクティブに過ごすために大変重要であると述べた。そのため、このような検定をスタートさせ、すでに9回を数えているそうだ。もともとまなび考房では、シニア向けの教室を開催されていて、そのノウハウがこの検定に生かされている。

さらに新しいことを学ぶと次への欲求が生まれ、どんどん探究心が増すとのことであった。実際に3級の検定を合格された人は、上級の検定を目指したいと答えている。

今後期待することとして、この制度によって資格を得たシニアが、実際にシニアを教える能力を活かす場ができることであった。それが、こういった資格を取得する上での「最終目的」となる。コラム①で紹介した、ドコモショップサーキット通り店の例もあるように、今後シニアがシニアを教えることが広まる中で、このような資格制度が生かされる時代がくるのではないだろうか。

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