21世紀COEシンポジウム「ユビキタス社会とケータイ」の後援報告

平成19年6月25日、東京大学大学院情報学環主催シンポジウム「ユビキタス社会とケータイ」が開催されました。梅雨の季節にもかかわらず、200名以上の方々にご参加いただき、大変盛況なイベントとなりました。
本シンポジウムを後援するモバイル社会研究所からも所長の石井威望が基調講演を行い、スタッフの遊橋裕泰がパネルディスカッションに参加しましたので、2人を中心に当日の様子をレポートさせて頂きます。


東京大学大学院情報学環長の吉見俊哉氏の開会挨拶に引き続き、シンポジウム開催の母体となった21世紀COEプログラム「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」の拠点リーダー坂村健氏から、お話がありました。「ユビキタス」という言葉を広めたことでも知られる同氏は、ユビキタス環境において、人と人、人と環境、人とモノとのコミュニケーションの橋渡しをするツールにはエージェントとしての役回りが今まで以上に求められるようになっていくのではないかと示唆されました。
将来のケータイがその役回りを担えるのかどうかは分からない。でも、ケータイがユビキタス社会で希求されるコミュニケーターマシンになるかもしれないと参加者に予感を持たせつつ基調講演につながっていきます。

基調講演「モバイル社会の展望」

基調講演「モバイル社会の展望」では、変化の激しいICTの中でも更に日進月歩のモバイルメディアをどのような視座から展望すべきか、議論を展開しました。モバイルメディアが提供するのはコミュニケーションの環境であり、人と人、人と環境、人とモノというように多様な形態になりつつあるものの、そのルーツは人間関係にあります。まだ言語を習得していない赤ちゃんの段階から相互的に母子の絆が形成されていく母子相互作用に触れつつ、コミュニケーションを支えるテクノロジーが変化すればそのメディアを利用するときに使われる脳の部位も替わってくるのではないかという見解を示しました。そして、モバイル通信下では、コミュニケーションを司る脳の部位と行動を司る脳の部位とが脳内でシナジーを起こしているような状況となっているのではないだろうか、という刺激的な切り口からメディアによって人々がエンパワーされる可能性に言及していきます。その上で、個人が情報発信できる新たなメディアの時代にはネットワークで人々を結びつけることでイノベーションが生み出され、それが社会を変えていくという展望を導き出していきました。

基調講演「モバイル社会の展望」

基調講演の世界観を受け継ぎつつ展開されたパネルディスカッション「ユビキタス社会のケータイ利用と親子関係」では、東京大学大学院情報学環教授の橋元良明氏をコーディネーターに、大阪大学大学院人間科学研究科准教授の辻大介氏、中央大学文学部准教授の松田美佐氏、弊所スタッフの遊橋裕泰が議論を展開しました。遊橋からは、子どもの携帯電話利用を考える上では、子ども間のケータイの保有率が40%を越えるライン付近から利用内容が変わってくることを紹介し、ネットワークの外部効果が利用文化的なところに影響しているのではないかという話題を提示しました。その後、辻氏と松田氏が行った調査の結果を素材としながら、親子関係の実態と課題や、可能性について議論していきました。


モバイル社会研究所としては、今まで主催イベントが多かった中で、脳内のシナジーに限らず研究機関同士のネットワークの中からシナジーを創り出そうとする取り組みの価値を実感するものとなりました。この場を借りて、ご参加いただきました皆様、企画立案者の橋元良明様、事務局として縁の下の力持ちをされていた小笠原盛浩様、関係の皆様にお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

(2007年7月25日)