
モバイル社会研究所は、2006年7月15日(土)千代田区立九段中等教育学校にて「キャリア講演会」に参加し、研究所員である遊橋裕泰(ゆうはし ひろやす)による講演をおこないました。開催当日は、460名の中学生とその保護者が講演会に集まり、関心の高さをうかがうことができました。以下に、当日のもようを簡単にご紹介いたします。
たとえば、東京ディズニーランドでは、主要アトラクションを結ぶ動線を工夫することで、わざと簡単に一巡できないようなつくりになっています。そうすることで、訪れたお客さんにぐるぐる歩き回ってもらい、様々なアトラクションやショッピングを楽しんでもらおうと考えるわけです。これも、一つの「ネットワーク」であるといえます。このように、「ネットワークの形」を考えることは「世の中のしくみ」を理解する手助けとなるのです。
まったく知らない人でも、友人の知人のその知人の・・・といった具合にたどっていけば、6人くらいの人間を経由して届くといわれています。ただし、この6人の中に悪意をもつ人が存在している可能性もあるのです。そういった「悪い人」ともネットワークでつながっているのだ、と自覚することが必要です。
子どもたちがケータイメールをやり取りする相手は、必ずしも学校の友達であるとはかぎりません。学校外の知人や、会ったことのない人とメールをやり取りする子どもは多いのです。くわえて、メールのやり取りを深夜におこなうなど、「いつ、誰と連絡をとりあっているのか」を保護者が認識できないとい問題がおこっています。これらは、「アクセス制限機能」というサービスを利用し、インターネットの接続先や深夜の利用に制限をかけることで、解決できるものもあります。
しかし、それだけで全てが解決できるわけではありません。実際に出会い系サイトを利用すると、何度も何度もしつこくメールが届き、大変な目に遭ってしまいます。相手は、自分のことを知らないにもかかわらず(たとえ文句のメールを返信したとしても)、メールを大量に送りつけてきます。
最近では、掲示板のホームページも人気を集めているようですが、これは「証拠が残る」メディアであることをきちんと理解しなければなりません(友達の悪口などもすべて残ってしまいます)。
ためしに、伝言ゲームについて考えてみましょう。(※講演会当日は、ここで実際に伝言ゲームを実施しました)最初の人から最後の人へ情報が行き届くまでに、どうしても情報の確実さは弱まっていきます。しかし、口頭ではなく手紙やメールなどの「メディア」(道具)を使用した場合はどうでしょうか。このようなメディアを使用すると、メッセージの正確さは高まります。最初の人から最後の人まで、一気に、直接メッセージを伝えてしまうことも可能になります。
今のモバイル社会においては、一人ひとりがケータイを持ち、一人ひとりが情報を簡単に発信することができます。新聞やテレビだけが一方的に発信する、という伝統的なスタイルはもう終わりつつあります。
インターネットのホームページには、他のページからたくさんリンクされるページと、あまりリンクされることのないページの両方が混在しています。リンクの数を多くもつページは、それだけ巨大な発信力をもっているということです。自分の発信するコンテンツをいかに読んでもらうか――そのためには、このような巨大な発信力をもつ人(コネクタといいます)と上手につながっていくことが望ましいのです。実は、情報環境よりも人間関係をうまく構築するほうが重要なのです。
ネットワークはヒト同士の「かたまり」(集団、グループ)によって構造化されています。中には、強いきずなでつながっているものもあれば、弱いきずなでつながっているものもあります。大切なのは、他の「かたまり」にいる人たちといかにつながっていくか、ということです。
たとえば、若い人たちはケータイを机の上などに出しておくことに抵抗をあまり覚えないようですが、高齢者の人たちは抵抗を強く感じることもあるといわれます。このように、自分たちがもっている感覚と、他の「かたまり」にいる人たちがもっている感覚は、まったく異なることがあるので、十分に注意をはらう必要があります。
映画のように大きな画面があれば、物語の背景など細かな部分まで伝えることができますが、ケータイのように小さな画面しかないと、重要なことだけを伝えようと、情報量がどうしてもしぼられてしまいます。限られた情報量で、できるだけ正確に伝えるためには、「この表現は適切だろうか?」と、相手ごとに十分な配慮をすることが大切です。
最後に、遊橋より以下のメッセージをもって、講演会は終了を迎えました。
「将来の社会を担っていくのは、他でもないあなた自身です。皆さんが考える2030年のモバイル社会とはどのようなものでしょうか。そのためには、何が必要なのでしょうか――ぜひ、私たちと一緒に、考えてみませんか――。」
モバイル社会研究所では、引き続き、「2030年のモバイル社会ビジョン」に関して、中学生の皆さんと対話を重ねてまいります。今後のプロジェクトの予定に関しては、このウェブサイトにて随時報告を行います。
※ 「2030年のモバイル社会ビジョン」に関するレポート
「子どもたちと考える未来のユビキタス社会」
当日の講演後、参加者された保護者や地域住民の皆様にアンケートにお答えいただきました。
「携帯電話やインターネットが普及していく中で、子どもたちに教えるべきことは?」という問いに対しては、「モラル・マナー」や「自由・責任」、「安全の確保」といった、「携帯電話」そのものよりもむしろ、「携帯電話を使ったコミュニケーション」をどのように考えるべきなのかという点に着目している意見が多く見られました。
今の子どもたちが携帯電話を手にする前、あるいは手にした後の早い段階で、「携帯電話を使うことにはどういう問題があるのか」について考える機会をもっていただきたいと思います。なお、いただいた感想の中には、「中学生には難しい内容だった」等の意見もあり、モバイル社会研究所としては大事なことを皆様によりわかりやすく伝えていくことも今後の課題であると実感しました。
以下、皆様からいただいたコメントの一部をご紹介いたします。
など
以上
(2006年7月28日)