テレビ電話で鬼ごっこ

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テレビ電話で鬼ごっこ写真01

12月とは思えないほど暖かった先週のワークショップとはうって変わって、雨模様の寒い日曜日となった。開始前の準備を行うあいだも寒くてコートが脱げない。

お昼を過ぎると、寒さなんてまったく気にせず元気いっぱいの様子で子どもたちが集まってくる。小学生とは思えないほどしっかり挨拶もできていて驚かされる。初めのうちは少し人見知りをして離れて座っていた子どもたちも、携帯電話を手にしているうちにお互い打ち解けてきたようで、学生のお姉さんを交えながらも自分のあだ名を教えあったりしている。

スタッフの声

夏休みに実施したときも好評を博したテレビ電話を使った鬼ごっこ。テレビ電話を使うと面白さが倍増するのはなぜだろう。今回はあれこれと作戦を立て、音を立てたり電気を消したり、遊びの中でさまざまな工夫が見られた。子どもたちが難なくテレビ電話を使いこなし、自在に活用する様に驚くばかりだ。

今日の遊びは、FOMAの四元中継機能を用いた新しい「鬼ごっこ」。ハンズフリーでテレビ電話をしながら、鬼は他の子どもたちを追いかける。ほんの少し前ならありえなかった、どこか不思議な光景だ。ペアを組んだ子どもたちは2グループに分かれ、それぞれ2名の学生スタッフがつく。一緒に作戦を立てて勝ち抜くための有志として子どもたちをサポートする。

テレビ電話で鬼ごっこ写真02

早速、鬼になった子どもは「おーい!」、「どこにいるのー」なんて携帯電話と向かい合って声を上げながら、全速力で走り続ける。階段の上り下りだっておかまいなし。大人たちは付いていくのに必死だ。

子どもたちは遊びに対する順応性がとても高く、柔らかい。10分も経たないうちに要領を得たようで、さまざまな知恵を働かせる。「あ~、ここには誰もいないよー。いまから1階へ行きまーす」と吹聴する鬼。こっそり2Fの教室の隅に隠れていた子どもたちはテレビ電話を通じてその声を聞き、ホっと胸を撫で下ろす。ところが……実はまだ鬼は2Fにいる。安心して気を緩めた子どもが動き出すのを待ち構え、「見つけたー!」。

スタッフの声

休み時間の合間にもケータイを手放さない子どもたち。他愛のない写真を撮って思いきり楽しむ。子どもたちには「ケータイ」=「玩具」としての要素が強い。コミュニケーションツールとして意識されることはほとんどないようだ。

しばらくすると、遅れて来た子どもたちが合流。3グループに別れ、より本格的な鬼ごっこをすることに。子どもたちの知恵にますます磨きがかかる。

スタッフの声

子どもたちにとって、ケータイはテレビ電話をするものでもあり、カメラでもあり、ビデオでもある。状況に応じて使いこなすセンスが抜群だ。大人たちが所有する感覚とは全く違うそれをもって、モバイルメディアを捉えているようだ。

テレビ電話で鬼ごっこ写真03

天気が悪いから外に出ることはできない。狭く入り組んだ校舎内を上手に逃げ回るためには、移動し続けるよりも、じっと一箇所に身を隠していた方がどうやら見つかりにくいようだ。口には出さずとも子どもたちは咄嗟にそんなことを感じ取ったのだろう。始めはドドドド……と騒がしかった校舎内がいつのまにか、しんと静まり返る。こうなるとテレビ電話も役に立たない。どのグループの画面も薄暗く、動きがないのでどこにいるのか完全にわからなくなった。「困った……」、「大人たちがホントに邪魔だよー」、「ねえ、誰か通った?」とこぼす鬼の子どもたち。

しばしのこう着状態。どうするかな?という大人の懸念をよそに、子どもたちはすぐに新しい作戦を考案してしまった。自分の携帯電話に向かって「あ!」「あ!」と、声をはりあげる。静かにして耳を澄ますと、どこからか微かに声が聞こえる。また繰り返す。また声がこだまする。通話中のタイムラグ特性を生かした見事な作戦だ。「このフロアにいる!」、「あっちの方から聞こえたよ」と、大人顔負けのチームワークで鬼の子どもたちがすぐ前の教室に駆け込んでいく。机の脇に身を潜めていた子どもたちと学生は思わず苦笑い。

テレビ電話で鬼ごっこ写真04

子どもたちは遊びに対する応用性も高く、ひとつ方法を覚えるとさまざまなバリエーションやその防止策を考える。声が反響するかしないかの判断がグンと早くなる。1Fから2Fへ、あっという間に3Fへ。次に、逃げる方の子どもたちから「スピーカーのボリュームを抑えてもいい?」。「ダメです」と答えると、「音が出るところを手でふさいじゃえばいいんだよ!」

ここで20分程度の休憩タイム。間断なく走り回っていたカメラマンや研究員たちはもうぐったり。「次は何の遊びをする?」と聞く学生に元気いっぱいの子どもたちは即座に反応。「また同じのやりたい!」、「鬼ごっこがいい! 面白い!」

今度は河村研究員の提案により、ルールを少し変更する。ずっと一箇所に隠れていたのでは探すのが困難だし、面白くない。だから、鬼が「ボン」と言うと、必ずその場から動くという新しいルール(必殺技)を追加する。ただし、必殺技「ボン」が使用できるのは1回だけだ。

更に厳しい条件下であっても、子どもたちの知能戦は止まることを知らない。あっという間に新しいルールに対応し、対策する。あるフロアに辿り着くと、息を弾ませた子どもが照明のスイッチを消そうとしている。あれ、先生は危険だからフロアの電気は付けっぱなしでいいと言っていたのに……。しかし、子どもが見つめている携帯を覗き込んで即座に納得、深く感心してしまった。4画面のうちのひとつが照明を消すと真っ暗になるのだ。「このフロアにいる!」。フロアの照明を消すなんて思いも寄らなかった。走り回って頭もろくに働かなくなっていた大人たちはしきりに感嘆のため息……。

あっという間にタイムオーバー。これで今日の遊びはすべて終了。ずっと携帯電話を手に持って遊んでいたのに、鬼ごっこが終わってからも、「カメラ撮ってもいい?」と言いながら写真や動画を撮って遊んでいる。子どもたちの感性は恐ろしいほど鋭敏で、希望を失わない。子どもたちが羨ましく思えて仕方のない1日だった。

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