研究報告「2030年のモバイル社会ビジョン」

2030年のモバイル社会ビジョン

2030年のモバイル社会へのロードマップ。

モバイル社会研究所は設立以来、携帯電話が社会に及ぼす影響として、すでに顕在化した事象や問題をとりあげ、調査研究活動に取り組んでいる。同時に、諸問題の本質を捉えるためには、より中長期的な視点でモバイル社会の方向性を検討する必要があると考えている。

このような認識にもとづき実施を進めた、この「2030年のモバイル社会ビジョン」プロジェクトでは、「バックキャスティング」 という手法を採用した。それは、環境問題の改善などにも利用されている手法であり、最初に「望ましい将来像」を描き出し、その後、「それを実現するためにはどうすればよいのか」を考え、ロードマップを展開していく手法である。これによって、主体的な意志をもって将来像を描くことを果たし、そこで見出された課題を研究活動の指針として把握したいと考えた。

また、本プロジェクトでは、一泊二日のワークショップ(合宿)を行った。今のモバイル社会を象徴する多様な論点を研究する識者を中心として、バックキャスティングの手法に則り長時間にわたって議論を行って頂いたもののである。

このワークショップで得られた成果をもとに、モバイル社会研究所では以下にしめすイメージ図を作成した。これは、2030年のモバイル社会へ向かうまでの過程を2つの軸と3つのパスで図示したものである。


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(※図をクリックすると拡大表示されます。)


2030年のモバイル社会を考えるキーワードは?

先に述べたワークショップの実施に先立って、参加いただいた識者の方々には、あらかじめ「キーワード」と「オピニオンペーパー」を提出いただいた。ここに、提出いただいたものの一部をご紹介することとしたい。

キーワード・・・
2030年のモバイル社会について、すなわちブロードバンドネットワークやモバイルメディアと社会との関わりについて考える上で、あなたが重要と思われる要素は何ですか。もっとも重要と考えられるものを、3つあげてください(3つの中での順番は問いません)。

オピニオンペーパー・・・
テーマは1、2のどちらかをご選択下さい。

  1. 2030年におけるブロードバンドネットワークやモバイルメディアと社会との関わりについて
  2. 2030年における人と社会について

※ 参加者氏名の下にあるPDFマークをクリックすると、オピニオンペーパー(PDFファイル)をご覧いただけます。

方向性が決定的なもの 方向性は分からないが重要と思われるもの
飯田 哲也
  1. (IT、インターネットなど)テクノロジーの進展
  2. 経済・情報・人・モノ・カネのグローバリゼーションとその交流密度の加速
  3. リソースの希少化(エネルギー、環境、資源、人、時間・・)
    (例:「日本の人口が減少する」)
  1. 社会の急激な変化に対する、人々や民族・国家からの応答
    (成熟した「個」社会に向かうか、退行した自閉的ナショナリズムの高揚か等)
  2. (政治、マネー、エネルギー、情報などで)分散型に向かうか、中央集権型が強化されるか
  3. 日本の財政破綻?破局か、ソフトランディングか
    (例:「世界経済における日本の影響力」、「再生可能エネルギーが化石エネルギーを代替するか否か」)
岡田 朋之
  1. 東アジア地域の少子高齢化
  2. マスメディアの地位の相対的な低下と個人による情報発信の機会の拡大
  3. 男女共同参画に向けての施策
  1. 東南海地震等、大地震の発生
  2. 少子高齢化に呼応して外国人流入対策に変化があるかどうか
  3. 市場中心主義の政策の是非
奥野 卓司
  1. 「多元的マニアックス」の増加(日本および東アジアにおいて)
  2. 「第三の社会」の拡大
  3. 「モノづくり」から「モノ語りづくり」への社会変容
  1. ユビキタス VS ウェアラブル
  2. グローバル・ビレッジ VS エスニシティ
  3. 生物学的・農学的テクノロジーの進展
杉田 洋二
  1. 地球の温暖化
    • 自然災害、公害、エネルギー問題とりわけ石油代替エネルギー、 海洋開発などへの影響大。
  2. 東アジアの世紀
    • アジアの経済力向上とエネルギー過消費、人口爆発、民族問題と領土紛争、シベリア開発等々。
    • 中国・インド・ロシアに注目。
    • 日本は省エネ、海洋国家としての独自性を。
  3. モバイル社会の深化
    • 人対人から人対物、物対物へ。ロボット時代、新しい時代の社会教育。
  1. 核不拡散か拡散か
    • 危険な拡散の方向が強まるが--。
  2. 民族自立か?集団連合か?
    • 時代ごとに揺れ動くため予測難し。アジアには多くの民族自立の要素があるため影響大。
  3. 遺伝子操作と「神」
    • 科学と信仰のぶつかり合いが起きることが--。安楽死、自殺予防も課題。遺伝子操作による食料増産の功罪。
辰巳 菊子
  1. 人のグローバル化、多様化(日本に住む外国人の比率が高まる一方、日本人の海外での永住者の増加)
  2. モバイルのための機器の更なる技術革新
  3. 人の心の不安定化問題(家族の問題からテロや戦争が引き起こす不安感まで)
  1. モバイル社会から切り離された高齢者がはみ出す社会ができる
  2. 実在するものとバーチャルなものとのギャップがわかりづらくなり混乱が起こる(五感の喪失)
  3. 地球環境の更なる悪化(特にアフリカ?)の一方東アジアの発展による次世代南北差の定着(緑、水、エネルギーなど)
田中 辰雄
  1. 人間は常に個別性と共同性を求める(人間の性質についての与件)
  2. ネットのブロードバンド化、CPUの高速化がすすむ(技術進歩についての与件)
  3. 東アジアでは国家主権は弱まらない(国際システムについての与件)
  1. オタク(繭化)は淘汰されて消える人間類型か、それとも定着する人間類型か
  2. 財政・年金は破綻せず切り抜けられるか(関連:経済成長率は再び高まるか)
  3. 少子化・人口減少は逆転するか
西田 光昭
  1. 教育環境の多様化
  2. 少子化
  3. 家族の核化
  1. バーチャルとリアルの関係
  2. 家族間のコミュニケーションスタイル
  3. 生涯学習の環境
橋本 秀紀
  1. 高齢者が増える(長生きする)
  2. 介護が深刻に(病人が増える)
  3. 日本の人口が減少する(世界全体は増えるだろう)
  1. 日本が巻き込まれる大きな紛争があるか
  2. エネルギー危機はあるか
  3. 科学技術にブレークスルーはあるか
平岡 善浩
  1. 世界人口の増加と日本人口の減少
  2. 世界あるいは日本における格差社会の進行
  3. サスティナブルな環境の必要性
  1. ITとロボティクスによる「新しい身体性」の顕現
  2. ITメディアの影響によるヒトの身体感覚、コミュニケーション能力の変化
  3. 異なるプロトコルのネットワーク同士を接続すること
藤正 巖
  1. 日本人口の減少
    • 日本の人口は2005年に極大値を迎え、2030年に死亡者数が最大値となる。
    • 2005年迄の25年間と2030年以降では人口減少と社会の様相は全く異なる。
  2. 日本の国内総生産(GDP)に極大値の到来
    • 日本経済の生産高は2012年頃極大値を迎え、以後減少する。
    • しかし、個人の国民所得は2030年頃までは現在と同程度を保つ。
  3. 都市社会のモバイル化はますます極端となる
    • モバイル化は日本の個人の8割が住む都市だけに極端に進み、都市の人達はより時間の価値が少ない生活を送る(時空間では、資本の原理に取り込まれている若い人達がこの層に当たる)。
    • モバイル化の進みようがない地方の生活者は、より充実した本質的な時間を教授するようになる(時空間では、個人主義に徹した経験の豊富な人達がこの層に当たる)。
  1. 世界で最も人口密度の高い日本でモバイルの持つ意味が問われだす
    • 全国平均でヨーロッパの5倍、米国の10倍以上高い可住地人口密度の国で、人はなぜ仮想の情報をほしがり、個人はなぜ人との接触を嫌うのか。
  2. 世界全地域で受信が可能なモバイルはできるのか
    • イリジウムに当たる衛星経由モバイルが、月間使い切りで3000円程度で手にはいるのはいつなのか。
    • 現在真にモバイル生活をする人達は携帯電話のモバイルは必要な時に全く使用できないのをよく知っている。
  3. もう一度社会生活と文化の世襲的側面(何も家に依存した世襲とはいっていない)の確認がおこる。その中でモバイル化は何の役割ができるのか。
    • 日本の政治を決めているのは、都市を基盤とする産業資本の論理(「かね」と生産性が価値基準)と、何百年にもわたって維持されてきた地方の伝統的世襲社会と文化(時間と実物が価値基準)の相克である。
    • この四半世紀内に起こりうる世界的激変を乗り切るには、第二次世界大戦に生活者の殆どを一時的に吸収し得た地方の余剰が再度必要になるかもしれない。
堀口 瑞穂
  1. 同年代(就労世代)における所得格差の拡大
  2. 地域(県レベル)による経済力格差の拡大
  3. 安全への欲求の高まり
  1. 金融と通信を併せて提供する事業者の倫理観
  2. 大多数の人のコミュニケーション欲求の内容と背景
  3. 科学技術の進歩とエルダー対応の進歩の速度差
御手洗 大祐
  1. 環境問題(温暖化等)
  2. 高齢化
  3. 通信帯域当たりコストの低下
  1. 政治体制の変化
  2. 社会倫理の変化
  3. 所得格差の拡大
宮田 加久子
  1. 異文化との接触の増大
    • 就労・結婚・就学等の目的で様々な国から移民が増大する。
  2. 家族形態の多様化
    • 同性カップル、ステップファミリー、友達同士が一緒に住む高齢者家族などの様々な家族の形態の増大。
  1. ライフスタイルの多様化
    • 食・住・労働においてもさまざまな価値を持って生活する人々が増大する。
  2. 高齢者の社会参加
    • 退職後の社会参加の増大?
  3. サービス消費の増大
    • 家事・育児・介護の外注化。
渥美 友仁
澤 美江
山崎 憲一
※敬称略
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プロジェクト参加メンバー

氏名 所属 分野
●専門家
徳田 英幸(座長) 慶應義塾大学環境情報学部教授 ユビキタスコンピューティング
飯田 哲也 特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所長 エネルギー
岡田 朋之 関西大学総合情報学部助教授 メディア論
奥野 卓司 関西学院大学社会学部社会学科教授 情報人類学
國廣 昇 電気通信大学電気通信学部講師 量子通信
杉田 洋二 元韓国・誠信女子大学教授、元毎日新聞編集委員 東アジア社会
辰巳 菊子 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会理事 消費者
田中 辰雄 慶應義塾大学経済学部助教授 経済学
谷 みどり 前環境省水環境部企画課長(現在は経済産業省) 環境
坪田 知己 日本経済新聞社日経メディアラボ所長 メディア
西田 光昭 柏市立土南部小学校教諭 教育
橋本 秀紀 東京大学生産技術研究所助教授 ロボット工学
平岡 善浩 宮城大学事業構想学部デザイン情報学科講師 建築
藤正 巖 政策研究大学院大学教授 人口
堀口 瑞穂 SUSPORT代表取締役 リスクマネジメント
御手洗 大祐 株式会社日本技芸代表取締役社長 ネットワークビジネス
宮田 加久子 明治学院大学社会学部社会学科教授 社会心理学
●株式会社NTTドコモ
渥美 友仁 ネットワーク企画部
伊藤 哲哉 コンテンツ&カスタマ部
河村 学 経営企画部
澤 美江 社会環境推進部
鈴木 茂美 国際ビジネス部
田畑 政和 社会環境推進部
塚田 麻紀 経営企画部
平賀 一樹 社会環境推進部
三嶋 俊一郎 第一システム営業部
山崎 憲一 ネットワーク研究所
他、モバイル社会研究所スタッフ9名
  • ※ 敬称略、五十音順。
  • ※ 所属はプロジェクト実行当時のものです。
  • ※ 本内容の無断転載・転用を禁じます。
2030年のモバイル社会ビジョン

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