Winnyによる音楽配信は、音楽CDの売上に被害を与えているだろうか。これを調べるための調査を行った。音楽CDのオリコン売上枚数の上位30曲のアルバムタイトル名をWinnyのネットワークで検索し、アップロードされているファイルの情報を入手する。Winnyのファイルには参照された量が記録に残るので、これとファイルサイズから大体のダウンロード数を推定できる。統計的に平均化するために5人の人間が独立にファイル検索を行い、その平均値をとった。 下の図は2ヶ月分のデータについて、横軸にWinnyでのダウンロード数、縦軸に音楽CD売上をプロットしたモノである。各点は一つのタイトルに相当し、CDが売れた枚数とダウンロード数をプロットしてある。この図から明らかに右上がりの関係が見て取れる。
しかし、これをもってダウンロード数が増えると、その結果売上がむしろ増えるなどと主張することはできない。普通に考えれば、因果はむしろ逆で、そのタイトルに人気が出て音楽CD売上が伸びると、ダウンロード数も増えると考えるのが自然であろう。このような相互依存関係を明らかにし、ダウンロード数が売上に及ぼす効果を分離するためには、操作変数法を使う必要がある。以下にあげるのは操作変数法での推定結果である。
ここで、ダウンロード数の係数が有意に負になっていれば、ダウンロード数が増えれば、CD売上が下がると主張することができる。しかし、推定値(0.879)は統計的に有意に負であるとは言えない。すなわち、ダウンロード数が増えても、CD売上枚数は減少するとは言えない。両者には関係が見いだせない。これは通説に反した結果である。通説は音楽CDの売上低迷の一因はWinnyなどのファイル交換ソフトの普及にあるとしている。しかし、ここで行った推定では、そのような効果は検出されない。 この推定結果はまだデータ数が少ない上に、検討すべき要因が残っており、きわめて暫定的なものである。データ数の増加、並びに分析手法の頑健性のチェックが残っており、結論は最終報告まで持ち越される。しかし、仮にこの結果が正しいとすると、ファイル交換によるコピーを禁止するために、訴訟など強権を発動する必要はないことになる。すなわち著作権の保護はゆるめるべきである。ビジネスの観点からは、ネット配信を試みる音楽事業者は、いわゆる違法コピーをそれほど恐れる必要はないということになるだろう。
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