実施報告

モバイルバリューシンポジウム2008

「モバイルバリュービジネスの新展開」
~電子マネー・ポイント・仮想通貨の見方・考え方~
9月25日、モバイルバリューシンポジウム2008を中央大学戦略経営アカデミーと共催した。
電子マネー・企業ポイント・仮想通貨の様々なバリューが、モバイルネットワークを介して発展してきた価値を「モバイルバリュー」と名付け、経済・技術・法律・社会の観点から明らかにした。
オープニングリマークス:石井威望(モバイル社会研究所所長)
写真1_モバイルバリューシンポジウム2008モバイルバリューが予想を超えて私たちに大きな利便を与えている。一方で様々な危険をもたらしている。時代の変化にともなって、10年前に予想されていたものとは全く違う状況になっている。特に通貨に関連することは大きく変わってきており、今回のテーマは非常に時期に即しているので、これからどうするかを十分議論していただき、今後の発展に繋げてほしい。
基調講演①「モバイルバリューへの誘い」:杉浦宣彦氏(中央大学戦略アカデミー教授)
モバイルバリューの現状と展望
企業通貨で6,000億円、電子マネーで1,800億円の市場規模がある。今後は、企業通貨で2兆~3兆円、電子マネーで5兆円を超える規模に拡大する可能性があるだろう。
モバイルバリューのメリット
①バリューの集約による割引サービスや優遇サービスの拡大
②現金より速く支払えること
③現金より安全であること
写真2_モバイルバリューシンポジウム2008今後の課題
①モバイルバリューの信頼性・安全性をどう維持するか
②携帯電話の故障による内部情報の損失
③サービス提供者側のサーバー障害等の技術的課題
④発行者破綻の場合の利用者保護のガイドライン
制度づくりにおける金融庁の動きについては、今後非常に注目され、それが進むことによってモバイルバリューはますます発展していく可能性があるだろう。
基調講演②「ネットワーキングの経済と信頼」:遊橋裕泰(モバイル社会研究所)
市場環境の現状
企業ポイント、電子マネーがらみの企業が現在150社あり、ほとんどがICTの仕組みでサービスを提供している。市場環境の中で競争が重要なのは間違いないが、ネットワーク上で同じポジションにある企業は競合関係にあり、一方で提携先として全く違う分野と手を組んでいるような企業は、モバイルバリューの付加価値が増すような補完関係でアライアンスが組めることが重要。同業と手を繋いでしまうと、自分のところのモバイルバリューの価値を増すことができなくなってしまうが、補完関係にあるようなところと手を組めればバリュービジネスが非常に付加価値を増すことになる。アライアンスによって独自の価値を見いだしていくことが鍵であり、戦略上非常に重要になってくるだろう。写真3_モバイルバリューシンポジウム2008
今後の展望
モバイルバリューが仲間同士で使えるということが鍵になっていくだろう。同じコミュニティや同じ社会システムの中では、それほど大きな価値を発揮しないものが、その境界を越えて違う価値体系にいる人と交換する時に大きな価値を発揮する。モバイルバリューの多様化が進むと顧客がどれを使ってよいか分からなくなってしまうこともあり、そこに携帯電話の意義があり人々の行動にフィットさせやすいと考える。
パネルディスカッション 「モバイルバリューの可能性とネットワークの連結型社会システムの信頼性確保にむけての課題」
安田氏からのコメント
特定の店でポイントが貯まると、その店に足を運びやすくなることを「ロックイン」効果と言い、顧客は商品の価格が少々高くても、その店を使うことになる。その状態を続けていくと顧客は価格に鈍感になり、それが顧客維持に大きい効果を生み出す。また、他の店に乗り換えるためには調査費用等諸々のコストがかかることを「スイッチングコスト」と言い、今の店にある程度満足すると冒険してまで他の店を探さないという状況になる。企業ポイントを運用する企業はたくさんあるが、そこには「スイッチングコスト」を生み出すことを目的とした人工的なメカニズムが働いている。最近、企業ポイントが複数の店で使えるというサービスが広がってきており、顧客にはありがたいことであるが、企業側にとっては、提携先を見極めないとせっかくつくり出した「スイッチングコスト」が消えてしまうことになる。特に同業種、隣接業種との提携は控えたほうが良いだろう。写真4_モバイルバリューシンポジウム2008 企業のモバイルバリュー戦略については、モバイルバリューを見ていく上でキーワードは「ロックイン」と「ネットワーク」。具体的に「ネットワーク」はSuica、Edyを普及させるにあたり重要な概念になっている。電子マネーのユーザーが増えると加盟店が増え、加盟店が増えるとユーザーが増える。最初のユーザーの増加がさらなる利便性を通じてユーザーの増加を促す。「ネットワークの外部性」があるマーケットが正のフィードバックを通じて大きなリードになっていくだろう。
水越氏からのコメント
ネットワーク上の顧客情報を使ったマーケティングにおいては、電子マネーとPOSシステムを連動させて、より良い製品開発、消費者サービスができるのではないかとしつつ、プライバシーの問題に関わってくるところが、今後の課題として考えられるだろう。
山本氏からのコメント
プライバシー管理については、消費者にうまく伝えることにより理解してもらえるのではないか。
杉浦氏からのコメント
ポイントを含めた電子決済は、プレイヤーが増加したことで決済コストが著しく下がってきており、金融機関以外のプレイヤーも多く参入してきて、それがモバイルをはじめとした効率の良いネットワークで顧客に利便性を提供している。海外にも、ポイントの仕組みは色々とあるが、日本ほど確実に広まってはおらず、日本は特筆すべき状況にあるだろう。「モバイルバリュービジネス」を拡大するにあたっては、社会で信頼されるサービス、ネットワーク、プラットホームが大事になるだろう。

モバイルバリューシンポジウム2008

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